ネット大好き人間ですが、大切なことは本から学ぶことが多いです。
この「1兆ドルコーチ」は、経営者やマネージャーの人、これからなる予定の人は絶対に読んだほうがいい本です。
これ以上なく、しっかりと実績を残している人なので、言葉が重いです。
テクノロジー企業だからといって、泥臭いことは重要なのです!
では紹介していきましょう!
そもそも「1兆ドルコーチ」とは?
世界的ベストセラーになっているビジネス書が、「1兆ドルコーチ」です。
IT業界なら誰もが知る企業の経営者たちが絶賛しています。一部をご紹介しましょう。
グーグルCEO スンダー・ピチャイ
アップルCEO ティム・クック
YouTubeCEO スーザン・ウォジスキ
フェイスブックCOO シェリル・サンドバーグ
どれもお世話になっている会社やサービスの著名人たちがコメントを寄せています。すごいメンバーですね…。
そして、さらに驚きなのが著者です。グーグル元会長兼CEOのエリック・シュミットが書いています。
エリック・シュミットと、過去Googleの先進的な働き方について書かれた、これまで世界的ベストセラー『How Google Works』の著者チームで書かれています。
エリック・シュミットが「1兆ドルコーチ」というわけではありません。グーグルを始めとする企業たちを支えた、影の立役者が別にいたんですね。
1兆ドル、日本円でいえば100兆円を超える大変な金額なわけですが、以下の人や企業たちを見たら、金額は妥当に見えます。いや実際はもっと大きく、2兆ドル以上と言われています。
スティーブ・ジョブズ(アップル共同創業者)、
エリック・シュミット(グーグル元会長兼CEO)、
ラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリン(共にグーグル共同創業者)、
ベン・ホロウィッツ(『HARD THINGS』著者)、
マリッサ・メイヤー(ヤフー!元CEO)、
チャド・ハーリー(ユーチューブ共同創業者)
経営者を支えた立役者の名を「ビル・キャンベル」と言います。名だたる企業の経営者のコーチとして、シリコンバレーで知られる人でした。
そんな経営者ビル・キャンベルは、起業家として名を馳せた人なのかという人と違います。出身はなんと、アメリカンフットボール、通称アメフトのコーチだったのです。コロンビア大学でアメフトのコーチを長くしていた彼は、その後ビジネスの世界に入り、Apple幹部、経営者を経て、経営者のメンターへとなっていきました。残念ながら、2016年にお亡くなりになっています。その葬儀には経営者たちが数多く集まったと言われています。
元々やっていたアメフトでのコーチの経験が、経営のコーチに大きく活かされています。ビジネスの世界に最初からいたわけではないからこそ、よく人の本質を見ていたのかもしれません。
企業を支えるのは人である
『1兆ドルコーチ』には、テクノロジー企業を牽引した、今すぐ活かせるなにか特別な技術が教えられているのかというと、違います。普遍的で変わらない、ビジネスに留まらないマネジメントやリーダー論が打ち出されています。
特に強調しているのが、会社にいる「人」です。技術でも商品でもなく、それをつくる人を大事にしろと語っています。
どんな会社の成功を支えるのも人だ。
マネージャーの1番大事な仕事は部下が仕事で実力を発揮し成長し発展できるように手を貸すことだ。
『1兆ドルコーチ』P.72
人の上に立つマネージャーが、どう指示をすればいいか、どう部下を扱うかといったことも彼は語っていません。マネージャーとしての最優先課題は、部下が幸せか、どうしたら部下が成功できるか、それを考えることです。自分よりも部下という、利他的な精神が見られます。
人をよく見る上で彼が実践し、そして実践を勧めたのが「1on1」です。ネット企業ではよくなされている1対1のコミュニケーションです。ヤフーの1on1が日本では有名です。
他の人がいないからこそ、本音を引き出せる機会を彼は重視していました。
そしてより質の高い1on1にするために議論すべきトップ5を挙げるようにしています。
1on1では、各々がボードに自分のリストを書くようにと教えた。2人で同時に手札を見せ合うようにすれば、何が共通しているかを2人で確認でき、それらのトピックをもれなく取り上げることができる。
『1兆ドルコーチ』P.83
重要な議題は1on1以上に、関係者が集まる複数人での会議、スタッフミーティングの場で話し合われていました。
全員に共通認識を持たせ、適切な議論を行い、意思決定を下すためにミーティングを利用するんだ
『1兆ドルコーチ』P.80
スタッフミーティングの場で重要な議論をしなければ、必ず「聞いてない」「自分だったらこうするのに」といった不満が表れます。議論に巻き込むことによって、当事者意識を高め、モチベーション高く働いてもらえるようになります。
そのためスタッフミーティングは重要な場のため、緊張しやすい場にもなります。萎縮すると、意見も出てきません。そういった会議ありますよね。
なのでビルは、積極的にアイスブレイクをします。
スタッフが部屋に入って腰をつけると、まず一人ひとりに週末何をしたかを尋ね、旅行帰りの人がいれば簡単に旅の報告をしてもらったのだ。
『1兆ドルコーチ』P.76
仕事以外のことを話をしてもらうことで、1人の専門家や責任者としてではなく、1人の人間として、受け入れられるのです。すると、活発な議論を交わすことができます。
チーム作りのためのコーチングとは
本を読んでいて驚きだったのが、心理的安全性のところです。
心理的安全性とは、誰かにはばかられることなく、自由に自分の意志や意見を言える状態のことです。最近聞く機会が特に増えました。
この心理的安全性はグーグルがよく語っていました。心理的安全性を高めるアリストテレスプロジェクトが有名です。なので、グーグルが編み出したものなのかと思っていました。
しかしこの本を読むと、ビルがまさしくこの心理的安全性を意識したコーチングを実施しているのです。この流れで、グーグルの心理的安全性への言及があったのかと、ハッとさせられました。
「最高のチームとは心理的安全性が最も高いチームなのだ」と彼は語ります。今までの1on1やスタッフミーティングも明らかにその点を重視しています。
そういった場作りをするために彼は積極的にコーチングを行っていました。
しかし、誰彼ともなくコーチングをするわけではなく、人を選んでコーチングしています。その対象はコーチャブルな人であるといいます。
コーチャブルな資質とは、正直さと謙虚さ、諦めずに努力をいとわない姿勢、常に学ぼうとする意欲である
『1兆ドルコーチ』P.132
ついつい八方美人的に話をし、苦労しがちですが、よく人を選んでいます。
自分よりもチームや会社といった自分より大きなものに献身できるかどうか。大きなエゴを持っていても大義のために尽くせるかが問われています。
コーチングにまったく適さないのは嘘つきだとも彼は言っています。
嘘つきはコーチャブルではない。そういう輩は、そのうち自分の言葉を信じ始める。自分の頭に合わせて真実を曲げるから、余計にタチが悪い。
『1兆ドルコーチ』P.139
ドキッとする言葉ですね。そんな人もいたなと思う一方、自身も気をつけなければならないところです。
経営者や目指す人なら必読本
ほかにも経営者へのアドバイスがぎっちり書いてあります。実践的でいて、普遍性のある書籍でした。
テクノロジー企業であったとしても、大事なのはテクノロジーではありません。それを扱う人なんだということを改めて教えてくれました。